A4:ご本人に病識(自分がなにかしらの症状を持っているという意識)がない場合、精神科に連れていくのは現実的にはかなり難しいといえます。本人に治療意欲があるかないかで治療成果が左右されるという点ではアルコール依存症などと似ているという見解があります。境界性人格障害の周囲の方は何かと振り回されたり、感情的に巻き込まれたりすることが多いので、まずは周囲の方自身が自分の生活ペースを守る姿勢を持つこと、こころの余裕と冷静さと安定感を持つことが大切です。周囲が不安定だとその不安定さが患者さんに数倍になって伝染してしまうからです。またご自身のことを大切にしてください。周囲が自分の生活や自分の世界を大切にできないなら、患者さんがそうなってくれる訳がありませ� �。もし唯一ご本人を精神科に連れていくもしくは通院を勧めるきっかけがあるとしたら、性格的なことに関してではなく、眠れない、不安でしょうがないなど「症状」として自分で自覚できる、病院にいって診てもらってもいいかなと思われるような点を指摘することです。しかしながら、実際はなかなか難しいですし、無理に通院を勧めることはかえってその後の治療をすすめる上で逆効果となることもあります。ご本人の自覚と治療意欲が何よりも重要だからです。対応に関してですが、まずは、ご本人と適切な距離をとることを心掛けることが肝心です。「つかず離れず、少し近め」が目安になると言われています。その上で、場合によっては、「私のこの対応は、あなたにとって厳しすぎるでしょうか?」「こ� ��ようなことをしてあげると、かえってあなたの自立心を損なってしまうのではないかと心配になるけど、どうですか?」「あなたを援助しようと思ってこういうことを言いましたが、どう感じましたか?」などと直接本人に正直に尋ねてみることも有効であるようです。あまり釈然とした返答がないかもしれませんが、問いかけはコミュニケーションの基本です。ただし日本語では、「どうして〜したの?」などと「どうして」「なんで」を多用すると責めているように聞こえるのでそれだけは慎重に言葉を選んだほうがいいかもしれません。また、周囲の方が接し方や態度を変えていくことが、ご本人がそれに呼応する形で性格や行動パターンなどを変えていくことにつながることがあります、ただしこの場合、支離滅裂なことをして� �ると患者さん本人も混乱し、不安になってしまいますので、一貫した態度を取り続けることが肝心です。なお、ご家族や職場など常にその方と接していなければならない状況にある場合、ご家族や同僚、上司などの方が精神科に出向き、代理診察を受け、適切な対処の仕方などのアドバイスを受けられることをお勧めします。ただし、家族で精神科にかかるとき避けなければならないことは、無用な犯人探しをしてしまうことです。原因が誰のせいであるかは重要ではありません。目的は患者さん本人の症状や行動の改善と家庭環境の安定化です。これは家族療法の基本なので、よくこころに留めておいてください。精神科にどうしてもかかりづらいということであれば、同僚や親戚などに話しを聞いてもらうというこ� ��でも構わないと思います。人格障害の治療に関しては、二者関係に第三者の視点が加わることは非常に重要です。保健所などにいらっしゃる精神保健福祉士(PSW)の方に相談に乗ってもらうというのもひとつの方法です。その意味でも、自分一人で辛い思いを抱え込まないことをお勧めします。精神保健福祉士(PSW)に関して詳しいことをお知りになりたい方はこちらへどうぞ。
A5:治療は長期にわたることが多いのです(一般的に5年以上といわれています)が、多くは障害の程度が軽くなったり、治ったりすると言われています。ただしこれには「自殺さえしなければ」「治療からドロップアウトしなければ」という条件がつきます。とくに患者自身が治療過程での様々な葛藤や困難に直面しても忍耐強くよくなろうと心掛けることが予後の良し悪しを左右すると言えます。ニューヨーク州立病院における205人の境界性人格障害患者に対する10年以上の経過研究では、自殺例が9%程度あるものの、約3分の2の患者が比較的良好な社会適応をしているという報告があります。その中には、心理学者または臨床心理士(10名)、弁護士(6名)、医師(5名)となった患者もいたということです。また我が国でも 町沢静夫のデータによると1年で30%、5、6年で60%の境界性人格障害患者が改善を示し、社会生活をおくっていると報告されています。いずれも、歳をとるにつれて、つまり加齢によってよくなるケースが多いということです。したがって、境界性人格障害は治らないというのは大きな誤りです。その他の予後調査などの結果を総合すると、1)症状面では長期経過(10年以上)の中で軽症化する。2)うつ病の診断基準を満たす者が多く、分裂病に移行する例はない。分裂病型人格障害に分裂病の発病が多少とも認められる。3)長期経過の中での社会適応は比較的よろしく、分裂病のそれよりもうつ病のそれに近づく傾向にある。4)自殺例(含む死亡例)も少なくない。という結論がこれまでなされています。加齢に伴って症状が軽くなるあるいは治癒するという報告の根拠については、自然治癒の可能性と自己治癒(自分の力で生き延びようとする姿勢)によるところが大きいのではないかといわれています。余談になりますが、人格の偏りということで、それを治すことに本人だけでなく、精神科医の中でも抵抗を覚える人もいます。現にヨーロッパとくにフランスなどでは、人格障害が少ないといわれています。他の国でそれと診断されるような人でも診断されないことが多いからです。これは、人格障害の人の中には学術や芸術などの分野で特異な才能を開花させる人もいるからという事実が背景にあり、それを治療してしまうことが一概によいことだといえないといった批判があるからです。治すという視点も大切かもしれませ� �が、自分の人格的な特性を自分も周囲も受け入れられるような形で表現していく工夫をするという視点があってもいいと思われます。
A6:薬物療法のみで経過を観察する場合と薬物療法と精神療法(カウンセリング)の両方からのアプローチで治療していく場合とがあります。しかしながら、一般的には精神療法(カウンセリング)が境界性人格障害治療の柱と考えている専門家が大多数です。カウンセリングでは、自分の気持ちを言葉で表現できるように指導していきます。心の中が混乱しているので、カウンセラーに話したり、日記や手紙など文章で表現したりすることで、心の中の混乱を自分で整理させていきます。それによって、自分の姿を客観的に捉えられるようにします。薬物療法では、症状に応じて強力精神安定剤(抗精神薬、メジャートランキライザー)、抗うつ剤、気分安定剤、抗不安薬(精神安定剤、トランキライザー)、睡眠鎮静剤などが 使われます。精神療法では、いろいろな理論を合わせた折衷派のカウンセリングが日本では一番多いのですが、境界性人格障害の治療には、精神分析療法、認知行動療法、家族療法、対人関係療法、集団療法(グループ療法)などが有効だといわれています。何を得意とするかは、それぞれの医療機関によって異なることが多いので、この病院(クリニック)ではどんな精神療法をされているんですか、と主治医などにお尋ねになると教えてくれると思います。なお、それぞれの療法に共通しているのは、最終的に人格障害を治すということよりも、人格の統合を図っていくということを治療目標にしている点です。もっと具体的に言えば、患者さん本人が苦しんでいる、辛い思いをしている癖や行動、考え方のパター� �を見い出して乗り越えることを目標にしているので、治療では「人格障害」を治すというよりも、今問題となっている行動や感じ方に対する対策をドクターまたはカウンセラーとともに考えていくということになります。なお、治療は、患者の欲求の充足を目指す場ではなく、むしろ欲求のコントロールの訓練の場であることを境界性人格障害の患者さんはよく心得ておく必要があるでしょう。また、治療を受けていることで社会のルールを守らなかったり、逸脱した行動を取ることを大目に見てもられることは決してありません。その点もよく肝に命じている必要があります。
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A11:境界性人格障害の病因論では、生物学的要因と養育環境における要因との相互作用によって発症するとする見解が一般的です。養育環境における要因としては、マーラーという学者の提唱した分離−個体化理論の再接近期(幼児期早期/1〜3歳前後)に、両親に代表される最初に出会う他者を介して安定した対象関係を持てなかったことで自己の発達が十分になされず、未熟な防衛機制の段階にとどまり、満足な人間関係を作れないことが現在、境界性人格障害の第一の原因だとされています。これが、「分離−個体化理論の再接近期における分離不安」と呼ばれ、この不安を安定化させることがこれまで境界性人格障害治療の主眼となっています。実際に人格障害の人には、幼少時における両親との離別、両親の不和、 離婚、虐待、両親の情緒的不安定、言動、ふるまいにおける首尾一貫性のなさなどの体験をしていることが少なくありません。精神分析理論では、あるストレスや心的外傷体験(トラウマ=こころの傷つき)などがきっかけとなって、境界性人格障害の人は満たされなかったこの時期への固着と退行(ある種の赤ちゃんがえり)が起こっている状態だと考えます。このほかに認知行動理論などでは、学習(一般的にいういわゆるさまざまな経験)によって偏ってしまった信念が、問題のある行動や思考パターンを引き起こすと考えます。養育環境に関してもっと一般的に言えば、家庭内の世代間境界が曖昧で家庭内の役割規定が不明確であり、家族関係に怒りや敵意などの激しい感情が渦巻き、その上相互のサポートに乏しいことなど� ��境界性人格障害の家族の特性として指摘されています。なお、Johnsonら(1999)は、20年間の追跡調査から発達期における虐待やネグレクト(無視、無関心)により人格障害が早期成人期に発展する確率が4倍高まることを明らかにしています。逆に家族の構造が強く保たれ、両親以外に養育者がいて両親の問題の影響を軽減できる社会では境界性人格障害の発生が少なくなるという報告もあります。(Paris, 1994)しかしながら町沢などは、我が国日本では虐待やネグレクトは極端に少なく、むしろ過保護や過干渉が、わがままや甘え、過敏な情動的な反応などを共依存の状態の中で助長し、境界性人格障害の発生の背景にしているようだと指摘しています。また、生物学的要因としては、遺伝的要因などが境界性人格障害の原因だという見解も最近では見られるようになりました。また、従来から多動児・注意障害児(ADHD)であったり、頭部外傷の既往があるなど病因の一つとして脳器質的要因も想定されています。また、最先端の研究では境界性人格障害患者の20〜40%にセロトニンの分泌異常があるという報告があります。また脳の側頭葉に脳波の異常が認められたり機能障害が生じている可能性も指摘さ� �ています。脳下垂体のホルモンが異常に高くなっていることなどもわかっています。さらに日本の家族形態においては、母親の過保護が原因であることがしばしば指摘されています。なお、最近ではこれらの要因に加えて、断片化した急速な変化をする社会文化的な要因なども重視されるようになってきています。いずれにせよ、以上の様々な要因が重なって境界性人格障害の原因となっているということは確かなことだと思われます。
A12:多くの境界性人格障害の人が下記の図のような悪循環に陥っていると言えます。
「わかっていてもやめられない」のが境界性人格障害のひとつの特徴だといえます。しかし、それを踏まえた上で、こうした悪循環から抜け出すために、医師やカウンセラーまたは周囲の手助けや助言を素直に受け入れる姿勢がよりよい回復のためには必要です。なお、境界性人格障害の患者さんがなんらかの症状や問題行動を呈するときの心理状態は、強い感情や特定の考えに支配されている精神状態、いわば心が一色に染め上げられている状態にあると言われています。その状態から抜け出す方法としては、その状態を距離をおいて眺めながら、自分自身の体験としての意味や対人関係における影響などを含めた多方面からの理解を導入して、その全体的な把握に努めること、他の事物に意識を集中すること、気晴らし をすること、リラックスするように心掛けること、といったことが有効だと言われています。
A13:とにかく物事に耐えること、我慢するということを覚えること、欲求不満や怒りや自己嫌悪を感じたとき、それをしばらくの間、抱えることを覚えることが第一ステップです。他者から何かしてもらうということだけでなく、自分から愛情や思いやりや優しさを与えることを覚えることも心掛けましょう。そして、できれば趣味などを持ち、フラストレーションや自信の喪失を解消し、新たな活き活きとした自分を取り戻す努力をすることも大切です。自分の苦痛をある程度抱えることができるようになり、相手のよい面も悪い面もあいまいな面も受け入れることができ、趣味などで欲求不満などを解消、昇華することができれば、自傷行為などもずっと減ってくるはずです。また、好きであった人が急に嫌いになると� �う体験も、その人のどんな側面に出会っても、どんな人にもいろんな面があるのだという認識をもつこと、さらにはできればその相手の立場に共感することがとても大切です。とくに相手のあまり好きでない部分にすぐ拒否や反発をせず、それをしばらく受け入れて、抱えていられることで、BPD特有の空虚感が消失するといわれています。また、他者にもそれぞれの事情があること、必ずしも自分の思い通りにならないことを知ることも重要です。また、自傷行為や問題行動などに関しては、それをするとその結果どうなるかを、それをするより先によくじっくりとよく考えてみることがきわめて重要です。なお、境界性人格障害者の基本的な認知の歪みを修正していくことが重要であると認知療法の先駆者A.ベックは述べて います。境界性人格障害者の基本的な認知の歪みとは、1)この世界は危険で悪意に満ちている、2)私は無力で傷つきやすい、3)私は生まれつき嫌われものだ、の3つの歪みであるとし、この中間的な段階がないのが特徴であると言っています。これらを例えば、1)この世界でも安全だと感じることもある、2)私は強い意思を持とうとしたこともある、3)私を慕って話し掛けてくれた人もいた、などと認知の歪みを修正していくことも、:境界性人格障害からの回復には、とても重要なことです。とくに:境界性人格障害の方は、理想−現実、良い−悪いという極端な二分法で物事を考え、捉えやすいので、世の中にはあいまいなもの、白と黒の間にあるグレーなものの方が多いのだという事実を受け入れていくことが、非常に大� �になっていきます。とくに人物については、たとえば、「お父さんは乱暴だけどやさしいところがある」とか「お母さんは母親であると同時に女でもあり、妻でもあり、人間でもある」などといった多様な側面を認識できるかどうかが重要になります。自他ともに良いも悪いもあいまいなものもすべて受け入れられたとき、あなたはもうすでに:境界性人格障害から回復してきていると言えるでしょう。
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A16:管理者komorebiは独自に複数の専門家に自傷、自殺衝動が高まったときの応急処置として一番いい方法は何か尋ねてみました。あくまで対症療法ですが、薬を飲んで寝てしまうこと(15分〜30分は寝つけなくてもベッドに横になって目を閉じてじっとしていてください、やがて薬が効いてきて気分が落ち着くはずです)、という回答が圧倒的に多かったです。この場合の薬とは、普段飲んでいる薬や頓服のことを指します。多くても普段の倍量(2倍程度)くらいまでなら服用して構わないとのことでした。決して大量服薬はしないで下さい。また、最新の研究報告では、腕や手首にマジックペンでマーキング(落書き)をすることでリストカットやアームカットを回避できる有効な手段になるという報告がありま す。血の色に安心感を覚える人は赤のマジックで手首をなぞるといい、というわけです。(同じような意味合いで、ビタミン剤など大量に服用しても身体に害が無いような錠剤を大量服薬したくなったときに飲むというのも有効ではないかと思います。また攻撃性が外に向かう人はサンドバッグを通販で購入したり、クッションなどを殴ったりしてみるといいと思います。破壊衝動が強い人は、100円ショップなどで皿などを買い込んできて人目のつかないところで思いっきりそれを割ってみるなども効果があると思います。また、頭に血がのぼってしまった状態や自分を見失いそうなパニック状態では、部屋の中にあるものや窓の外の景色などを数えたり確認したりする儀式的な行為が有効であることがわかっています� �「あ、机がある、椅子がある、天井がある、テレビがある、カーテンの波は1、2、3、4、、、と指差し、数えて確認していきます。これをこころが落ち着くまで繰り返しまず。すると、危機的状況から気をそらすことができ、リストカットやODをやり過ごすことに成功することがあります。より詳しい対処法については米国のサイトにある自傷行為の対処法をExciteでウェブ翻訳したものをリンクしておきますのでぜひ参考にしてください。(※ただし翻訳が機械翻訳のため不自然ですのでご了承下さい。なお文中に出てくるSIという単語はSelf-injury=自傷のことです。)いずれにせよ自傷行為、攻撃性、自殺衝動を自分でだましてみるのもこの障害を乗り越えるためのひとつの智恵だと思いましょう。)大量服薬(OD =オーバードーズ)やリストカット、アームカットをしてしまう人の心理の多くは、自分のこころの傷や痛みに気がついて欲しい、自分の話しを聞いて欲しい、自分が愛されるに値する人間かどうかを確かめたい、生きている実感が欲しい、内的な苦痛に見合う外的な痛みを感じる必要があった、自己嫌悪や怒りを自分自身に向けてしまう、とにかく存在を消してしまいたいなどといったものです。また、「手首の人格化」と呼ばれる機制として、手首などを自分の両親など実際の人間のように考えてそれを罰するために自傷を行なうケースもあると言われています。それらのことを別の方法で、例えば親しい人に言葉で打ち明けて共感してもらうなどの練習をする必要があると思います。自傷行為のきっかけとなった欲求を言葉で伝� ��られるようになることで、自傷行為は激減すると言われています。しかしながら、こうしたことは時間をかけてゆっくり訓練する必要があるでしょう。また、リストカットをしたくなってしまうきっかけとなるものに、家族や友人との対立、孤立、離別などの対人葛藤や対人関係の破綻、不安定な家族関係や幼少時の虐待のフラッシュバックなどがあります。なお、生物学的な研究ではリストカットをしたい衝動に駆られているとき、脳内のセロトニンやβエンドルフィンといった脳内麻薬のような分泌物が増加するという報告があります。これはつまり、リストカットをすることで、気分を落ち着かせたいということを意味しているのかもしれません。またそうした陶酔感にひたることで普段の厚い鎧(よろい)や仮面をはずし、� �離不安のあった幼児期に退行して安心感を得ることができるからであるという説もあります。なお、大量服薬(OD)は、命の危険はもちろん、一歩間違うと肝機能障害を起こし、一生透析生活を送ることになったり、半身不髄、脱毛、植物状態になる可能性もあります。リストカットは、比較的致死率が低いとはいわれていますが、動脈まで達してしまった場合やはり命の危険があります。いずれの行為も、それを繰り返しているがために、周囲の大切な人を失ったり離れていってしまい後悔する人が、多く見られます。その結果自分をさらに追い詰める結果になります。そのリスクを常に意識している必要があります。自分でどうしても制御できない場合、周囲の人にあらかじめ薬や刃物などの管理をお願いしておくという方法も 大変有効です。実際は、どこにしまっているかわかっていても、ワンステップあることで、やめておこうと思い直すことが多いからです。
A19:あります。境界性人格障害と他の精神疾患の合併比率は96%と言われています。別の報告では境界性人格障害と同時に診断される精神疾患でもっとも多いのは気分障害(うつ病)で境界性人格障害患者のほぼ100%近くが気分障害の診断基準も満たすのではないかと言われています。次いで多いのは、気分変調症(軽症うつ病)、不安障害(パニック障害)、摂食障害(拒食症、過食症)、物質関連障害(薬物またはアルコール依存)、身体表現性障害、解離性障害などがあります。統合失調症(精神分裂病)なども頻度はかなり少ないと思われますが、同時診断される可能性はあります。
A20:学者や専門家によって意見は様々ですが、一般的には性格は変えられるものだといえます。人格(パーソナリティ)は気質と性格から構成されています。気質は生まれ持ったものですから、なかなか変わるものではありません。性格は、育ってきた環境などによってある程度特徴づけられてしまいますが、その後の環境や本人の価値観や意思によってある程度変えられるものです。精神科の領域では、考え方や行動のパターンを変えていく認知行動療法などのほか、性格を変える上で様々なアプローチがあります。
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Q27.境界性人格障害の患者は就職できるのでしょうか?
大きく3つの原因が考えられると思います。一つめは、人格障害は性格の偏りによって生じるさまざまな障害なので、性格というものの性質上長い時間かかってできあがったものなので、これを修正することにも同じように長い時間がかかるということです。二つめは、自分が人格障害だということに慣れてしまい、医学書など人格障害に関するさまざまな本やネットなどの情報を過剰に目や耳にするようになると、自分は人格障害なんだと自分に繰り返し暗示をかけてしまい、いつのまにか以前よりもっと人格障害らしくなってしまうといったことがよく見られます。これを医原性人格障害といいます。三つ目は自分は人格障害だから仕事をしなくていいとか、人から優しくされて当然だとか、知らず知らずのうち� �人格障害であることに付随する利益を思うがままにするようにそこにあぐらをかいてしまうような状況が生じます。病気なんだから甘えたり、わがままを言ったり、何でも許されると考えてしまうと、回復が遅くなります。そうした病気でいることで得をすることを疾病利得(しっぺいりとく)といいます。これらのほかにもさまざまな原因が治りにくい理由として考えられますが、上記の3つは頭の片隅に置いておいてみてください。
「自分には居場所がない」、「安らげる場所がない」という訴えは、境界性人格障害や回避性人格障害を中心として広く認められます。このような方々の多くは、ある場面で自分を受け入れてもらおうとして、過剰に気を遣ったり、周囲からどのように見られているかを意識し過ぎて疲労や緊張を強めて、かえってその場に留まることができなくなるという現象がよく見られます。対処法としては、その場での対人関係を負担にならない程度にまで縮小して自分を目立たせないようにすること、大人しくしていようと心掛けてみること、多少は悪いところを出してみて、それを周囲に受け入れてもらうようにするとかの方策が考えられます。外見的に何も問題ないように振る舞っていること自体がとても辛いという場合などがよくありま� ��ので、そうした自分の状況を自覚してあげること、つまり自分のこころの中に自分の居場所を与えてあげることも大切です。なお、ひきこもりがちで、社会との接点がみいだせなくて不安な方には、各市区町村が「精神障害者地域生活支援センター」という、精神障害者同士、およびその家族が交流を持てる場所を提供しています。こうした施設を利用してみるのも、よい方法です。全国の「精神障害者地域生活支援センター」の一覧はこちらです。※ただし、最近は次々に新しい支援センターが出来つつあるようですので、リスト中になくても、一度お住まいの市区町村に確認してみてください。
Q36.自殺衝動が強い人に「死にたい」と言われた時どう対処すればいいですか?
まず、自分をしっかり持って、相手の気持ちになって、ひたすら話を聞いてあげて下さい。これらを専門的には、「共感的理解」、「無条件の肯定的理解(配慮)」、「自己一致」と呼び、カウンセリングの大原則となっています。メールや電話など直接対面できない状況の時の対処の仕方はこちらのページが大変参考になります。
「無条件の肯定的理解(配慮)」とは、非審判的・許容的な雰囲気をつくることです。相手が「ここでは何も話してもいいんだ、とがめられることはないんだ」と安心して心を開ける土俵作りです。ただそれだけのことですが、これが以外に難しいことです。 人は誰でも自分なりの価値観を持っているからです。「うそはつくべきではない」「離婚はすべきではない」「年長者には敬意を払うべきだ」などなどです。自分の価値観に反する行動を相手が示すと、どうしてもそれをとがめたくなるのです。「未成年のくせにどうして酒なんか飲むのか」という具合です。カウンセリングでは「治そうとするな。わかろうとせよ。」を基本姿勢にしています。この、わかろうとする姿勢が「うんうん、そうか、なるほど」という反応になって表れるのです。裁く姿勢、とがめる姿勢、治そうとする姿勢が感じられたとき、相手は防御的になるか攻撃的になります。そこには許容的雰囲気はありません。「頑張れ」「甘えるな」「元気を出せ」「前向きに生きろ」「気分転換に身体でも動かせ」などの叱� ��激励や精神論、正論やポジティブシンキングの押し付けなどは、最も本人を辛く苦しめるものです。よけいに自殺に追い込むことになりかねないので絶対に禁物です。それが無理だから苦しんでいるのですから。
「共感的理解」とは、相手の言葉から感じられる気持ち、たとえば怒り、悲しみ、恐れ、喜び、混乱、当惑などの気持ちをそのままに感じ取ることです。自分の判断は混ぜないで、ただ聴いたとおりに感じ、ついていけばよいのです。 「共感」の本当の意味を理解するために「同情」とどう違うのかを考えてみましょう。この区別は微妙なのですが、「死にたい」と言われた時に求められるのは、あくまでも「共感」であり「同情」ではありません。同情も相手をいたわる気持ちから発するものではありますが。 「あのことで課長にこっぴどくしかられちゃったの。すごくくやしい…」 に対して 「えー、かわいそう」というのが同情的対応です。 「そうだろうね、くやしかったんだよね」というのは共感的対応といえます。 同情的に「かわいそう」というのは、相手よりも高い位置にいて観察し、感想を述べているという感じです。「評価」しているニュアンスもあります。相手は、「別にかわいそうではない」と思うかもしれません。 ここでは「すごくくやしい」という気持ちを受け止め、相手の立場に立って「ともに感じる」のが共感なのです。「共感」の意味をよく表した言葉に「相手の気持ちに寄り添う」という表現があります。
「自己一致」とはどういう状態かというと、「その場面でありのままの存在であり、作為(うそ偽り)がない」ことです。共感の言葉や反応が、本心から発せられているということです。 つまり、口では相手を受容・共感しているが、内心は「どうしても受け容れられない」という場合、自己一致していないわけです。いってみれば「うわべだけ」の応答があって、受容している・共感している「ふり」をしているにすぎません。自分の応答が、いま、自分の気持ちに一致している状態が「自己一致」です。 しかし実際問題として、常に「自己一致」の状態で、相手を受容し、共感することができるものでしょうか。相手をしているうちに「この人はなんて自分勝手なんだろう」「なんでこんな小さなことにこだわっているんだろう。情けない」などと感じてしまうこともおおいにあります。自己一致というのもやさしいものではないことがわかります。しかし、それを心掛けることが大切なのです。
Q37.「自我が弱い」と言われました。「自我」や「自我の確立」って何ですか?
昔の哲学者デカルトは『我思う、ゆえに我あり』と自我とは自分を自分として認識することだと考えました。以降、西洋社会では、「自我」という概念は、哲学のみならず、さまざまな学問の研究対象とされてきただけでなく、一般人の日常生活で使われるようにまでなりました。さて、自我とは何かですが、フロイトによれば、「自我とは外界の現実と接触し適応していくため,エスからの欲求や超自我からの禁止を調整し,心の安定や人格の統合をはかる働きをする」ものだということです。これを噛み砕いて言えば、まわりの友達や家族や学校や会社の人、ときに赤の他人なんかとうまくやっていくために、どうしょうもなくこみあげてきておさえられない感情や、欲望(とくにわがままなものとか)なんかと、これはやっち� ��いけない、さすがにヤバイでしょ、我慢しようなどと自分で思うことの折り合いをつけて、バランスよくコントロールする考えや意識のことを指します。自我とはいわば、「冷静で客観的な大人の心」のようなもので、「自我の確立」とは、手っ取り早く言ってしまえば「大人になること」っていうことです。じゃあ、「大人」って何?と聞かれた場合、いつも安定した心をもって、世の中でそれなりにうまくやっていける人」のことを指すと言っていいでしょう。超自我はいわば世話好き(ある意味おせっかい焼き)でときにお説教くさく厳しい親のようなもので、エスは、(ときにワガママで、ときに依存的で甘えん坊な)未成熟な子どものようなもので、この二人の関係をうまく仲裁したり、仲直りさせたり、妥協させたり、� ��実的に筋が通るように解決していくのが、まさに「自我」の役割です。ですから「自我が脆い」とか「自我が弱い」という場合、この「冷静で客観的な大人の心」が、未成熟な子どもに負けちゃったり、厳しい親にかんじがらめにされて身動きが取れなかったりという状態の事を言うのだと考えるとわかりやすいと思います。精神医学や心理学は西欧社会の個人主義的、合理主義的文化風土からそもそも生まれてきたものなので、「自我が強い=よいこと=目指すべきこと」という図式が欧米人にはすんなり受け入れられてきました。しかし、それらの文化や思想、哲学を和訳して輸入しているだけの、しかも「あうんの呼吸」「つうかあの仲」「以心伝心」「協調性」「和」を「よいこと」としてきた日本では、「自我」とい� ��概念自体が、極めてつかみにくいもの、理解しにくいものになっているのが現状だと思います。しかしながら、日本文化も欧米化してきている昨今では、「自我の確立」は、ある程度避けて通れない課題になっているのだと思います。ちなみに余談ですが、中には「自我、またはより一般的に心・意識は脳の活動に他ならないという立場から、自我とは脳のある特定のメカニズム・はたらきによるものであり、特別な脳部位に局在しているのだ」という唯脳論的な考え方の人もいます。結論としては、自我を確立できるならそれにこしたことはないですが、あまり「自我」という言葉にかたくなにとらわれ過ぎず、柔軟な心と社会性を身につければ十分だと思います。ちなみに、「自分のせいだ」と自分を責める(自罰的)ことと、「あ� �つのせいだ」と他者を責める(他罰的)ことがあるとすると、自我は常に自分も他者も責めない解決法(無罰的)を探します。「人間には波があって当然」とか「気分が不調になる季節なんだ」とか「今日はついていなかったけど明日はついているかもしれない」などと考える訳です。言葉を変えれば、物事を合理的に割り切って生きていく力が「自我の強さ」といえるのかもしれません。
Q38.主治医が話を聞いてくれません。じっくり話を聞いて欲しいのですが...
Q39.通院医療費公費負担(精神保健福祉法32条)を申請したいのですが。
2006年4月1日より施行された障害者自立支援法により、通院費やカウンセリング代が5%〜無料ですむようになっていた、これまでの精神保健福祉法第32条に基づく通院医療費公費負担制度は2006年(平成18年4月)から障害者自立支援法に基づく自立支援医療費支給制度に変更されました。障害者自立支援法に基づく新しい利用者負担については、こちら(※東京都の場合)またこちら(※大阪府の場合)をご参考になさって下さい。障害者自立支援法に基づく医療費支給制度についても、精神障害者保健福祉手帳・障害年金などについても、各自治体によって内容、申請方法が異なる場合があるので、まずはお住まいの市区町村の役所の健康福祉関連窓口で詳細はお尋ね下さい。参考:厚生労働省「障害者自立支援法」
Q40.うつ病や境界性人格障害でも入れる保険はありますか?
現在、精神科や心療内科に通っており、薬を飲んでいる場合、一般的な医療保険、生命保険にはほぼ100%入れないと思ってください。理由は自殺などで死亡した際にそれが個人の意思なのか、他者によるものなのか識別が非常に困難だからだそうです。うつ病や境界性人格障害でも入れる(可能性が高い)保険としては、「引受基準緩和型」もしくは「無選択型」と呼ばれる保険があります。「引受基準緩和型」は告知事項が緩やかか、もしくは少ないので、現在通院投薬中の人でも入れる可能性が高いです。ただし、その多くは加入条件が40歳からとなっており、若い患者さんは加入できません。例としては、アフラックの「どなたでも」、アリコの「ずっとスマイル」、AIU保険の「がんばれ!40's」、損保ジャパンひまわり� �「限定告知型医療保険」、アクサ生命の「新安心基準」、太陽生命の「やさしい保険」などです。では、「無選択型」とは何でしょうか?これは、告知が一切必要ない代わりに、保険料が通常の1.5倍ほどになるという保険です。例としては、ソニー生命の「終身保険」、エース損保の「保険貴族」、COOP共済の「たすけあい1000円コース」などです。なお、「引受基準緩和型」の保険で唯一若年齢でも入れる可能性のある保険は、三井生命の「おまかせください」がありますが、かなり割高のようです。なお、ここに列記した保険は2007年10月現在の保険商品の情報で、特定の保険を勧めるものではありませんので、ご注意ください。
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